例えば産総研でも調査を行っている草津白根山の場合、国道が火口のすぐ近くを通っているので、火山活動が活発化するとすぐに通行止めになるんですよね。

石塚:そうなんです。草津白根山では、火山活動のレベルに応じて、国道に規制が敷かれます。

例えば、火山性地震が増えたり、山体の膨張が観測されたりすると、レベル2に引き上げられて、国道が通行止めになることがあります。

―― レベルの判断は、気象庁がデータに基づいて行っているんですよね。研究者の立場から見ると、レベルの引き上げ基準などについては、どう感じられますか。

石塚:そうですね。気象庁では、過去の事例なども参考にしながら、レベルの基準を設定しています。

ただ、火山活動の評価には、さまざまな不確定要素が伴うので、判断が難しい場合もあるでしょう。観測データ上は活発化しているように見えても、実際の現象としてはそれほど顕著でないケースもありますからね。

規制をかけるタイミングは、社会的な影響も考慮しながら、慎重に見極める必要があると思います。かといって、安全サイドに倒しすぎると、今度は住民生活への支障が大きくなる。そのバランスを取るのは、なかなか難しい課題だと感じています。

―― 火山防災は本当に難しいのですね。

石塚:そうですね。火山の防災対策は、科学的なデータだけでは判断しきれない部分もあります。

火山の専門家と、行政、住民が連携しながら、火山との賢明な付き合い方を模索していく。そういう地道な努力の積み重ねが、火山防災には欠かせないのだと思います。

火山の動向を探るための噴火後調査は危険と隣り合わせ

――火山噴火後の調査報告書をいくつか拝見させていただきました。早いものだと噴火翌日には調査が行われていますが、噴火後の調査はどの程度のスピード感が求められるのでしょうか。

石塚:結論から言えば、早ければ早いほうがいいですね。なぜかというと、火山の場合、噴火が起こった後に次にどうなるかを判断する必要があるからです。