なんと、動こうとしない魚たちを殴り、獲物を探しに行くよう促すのです。
サンパイオ氏は、このタコの暴力を初めて目にした時のことを次のように語っています。
「これを初めて見た時、私は撮影中でしたが、思わず笑ってしまいました。
そのためカメラをまっすぐに構えることができず、その映像は使用できなくなりました」
そして狩りグループの中でも、ハタの一種であるアカハタは、「タコ軍曹」に最も頻繁に殴られていました。
そもそもアカハタは「待ち伏せするタイプ」の捕食者であり、動かず、自ら獲物を探しに行きません。
他の魚が追いやった獲物をいわば「盗む」ことの方が多いのです。
厳しいタコ軍曹は、そうしたアカハタの態度が気に入らないのでしょう。
動画には、タコがアカハタを殴っている様子が何度も記録されており、なんとか働かせようとしています。
それでも科学者たちは、アカハタの待ち伏せする態度が、いつも群れに迷惑をかけているわけではないことも発見しました。
アカハタはいわば「アンカー」のような役割を果たしており、群れを一カ所に留め、その海域を「もう一度探る価値があるかもしれない」という合図を送っていたのです。
彼らの獲物を待つ忍耐力が、群れ全体に貴重な情報を提供していたのです。
また、そんな彼らが「待ち伏せ」ではなく、「移動」を選択することもあり、それは群れ全体が狩場を移動すべきことを示す「非常に強力な合図」となります。
普段はアカハタを殴っているタコ軍曹も、「アカハタが移動したいということであれば、ここには獲物がいないのだろう」とアカハタの判断を高く評価するのです。