「今の守備のやり方は変えずに、それを磨き上げるという方針か」。先述のG大阪戦終了後、筆者はミックスゾーンにて湘南MF田中聡へこのように問い、「そうですね。もっとボールにタイトに行ければ失点は減ると思います」と同選手は答えている。ゾーンディフェンスの練度を高めることを誓っていたが、シーズン終盤に差し掛かっても同じような失点を繰り返している事実をふまえると、選手個々の注意力不足にこの問題を帰結させるべきではないと筆者は考える。少なくともコーナーキックについては、守備の段取り自体を変えるべきだ。ニアポスト(ボールから近い方のゴールポスト)付近にクロスボール弾き返し要員をひとり立たせるとともに、ゴールエリアのライン上(ゴールラインと平行な線)にゾーンディフェンス要員を2人ほど立たせる。これに加え残りの選手をマンマーク守備にあてるというように、ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンス要員の割り当ての工夫は急務だ。

(※1)コーナーキックやフリーキックなど、試合再開に際しボールをセットして行うプレーのこと。(※2)各選手が自分の担当区域に入ってきた相手選手をマークする守備戦術。

鈴木淳之介 写真:Getty Images

クロス対応失敗で2失点目

湘南は前半27分に鹿島のサイド攻撃を浴び、鈴木優磨の低弾道クロスを濃野に物にされる。ここでは湘南MF鈴木淳之介(3センターバックの一角)が自身の背後を濃野に突かれており、そのうえシュートを許してしまった。

ゴール前に侵入してくる相手選手とクロスボールを、同一視野に収めるような立ち位置や体の向きを整えられない。これは湘南センターバック陣がかねてより改善できていない問題であり、この弱点が今節も失点に結びついてしまっている。鈴木淳之介の背後に立っていた味方DFキム・ミンテはペナルティエリア内で首を振り、鹿島MF仲間隼斗を注視していたため、濃野への寄せがワンテンポ遅れてしまった。クロス対応の局面で、自身の死角(背中)に相手選手を置かない。湘南センターバック陣にこの原則を落とし込む必要があるだろう。


福田翔生 写真:Getty Images

逆転勝利の要因は