ハイプレスでのボール奪取を狙ったことで、鹿島の最前線、中盤、最終ラインの3列がやや間延び。ゆえにボールが互いの陣地を行き来する目まぐるしい試合展開となり、これによって生まれたスペースを湘南が巧みに突けていた。湘南としては試合の主導権を握れていただけに、福田が前半8分に放ったシュートが鹿島GK早川友基に防がれたこと、そして田中聡の縦パスから生まれた前半14分のチャンスを平岡が物にできず、前半16分のMF鈴木雄斗のミドルシュートもゴールポストに阻まれたことが痛手となった。


田中聡 写真:Getty Images

未だに脆いセットプレーの守備

湘南は試合の主導権を握っていたにも関わらず、前半20分以降に2点を先取され窮地に陥る。同22分、鹿島のコーナーキックからDF濃野公人に先制ゴールを奪われた。

ここでは鹿島の長身DF関川郁万のマークを平岡が担っていたが、ペナルティスポット付近からニアサイド(ボールから近い方のサイド)へ走り込んだ関川に振り切られたうえ、ヘディングパスも許してしまっている。このラストパスを濃野に押し込まれてしまった。

湘南は今季セットプレー(※1)から多くの失点を喫しており、最終スコア2-3で敗れた8月21日の天皇杯4回戦(ガンバ大阪戦)、0-1で敗れた8月24日のJ1リーグ第28節(名古屋グランパス戦)でも相手コーナーキックから決勝ゴールを奪われている。天皇杯では後半31分にG大阪DF中谷進之介、名古屋戦の前半7分にはDF三國ケネディエブスのヘディングシュートを浴びており、これにより湘南は連敗を喫した。

また、同クラブはJ1第29節サガン鳥栖戦でも相手DF木村誠二にコーナーキックから同点ゴールを奪われている。セットプレーの守備の脆さは深刻だ。

湘南はゾーンディフェンス(※2)を主として相手コーナーキックに備えているが、鹿島戦を含む先述の失点シーンでは守備網の外側からゴール前へ侵入してくる相手選手を捕捉できていない。ゴール前で立ち止まった状態から守備をする湘南の選手と、勢いをつけてゴール前へ侵入してくる相手選手とでは、競り合いにおいて後者に分がある。これがゾーンディフェンスの難点であり、湘南は鹿島戦でもこの問題を克服できなかった。