ユーザー体験とセキュリティの保証は完全に異なるものであり、要は全財産を預ける用途で考える場合もあれば、資産を分散させてリスクヘッジさせる場合など、ユーザー固有の状況に左右されているということなわけだ。
鍵管理の責任はユーザーにあるからこそ、リテラシーの教育が重要
こうしたなか、Anant氏は「マルチシグ(複数の秘密鍵を必要とするセキュリティ技術)を念頭に置いて、『脅威をモデル化』すれば、あらゆる状況に耐えるセキュリティの確保ができる」と話した。
しかし、ウォレットを提供する企業にとっては、高いレベルのセキュリティを維持しながら、ユーザビリティを向上させることが求められるだろう。ユーザビリティとセキュリティのバランスを取るために意識している点について、Anant氏は次のようにコメントした。
「ユーザーが使いやすく、支払いやすく、NFTや暗号資産のようなデジタルアセットを簡単に保管できるユーザビリティを保つうえでは、セキュリティの確保や鍵管理は維持すべきです。
私は倫理的な観点から、『鍵を失くさない限りは、そこにビットコインは存在し続ける』ことを常に念頭に置くべきだと考えています。私たちは、『ユーザーが鍵を安全に保管しているか』をアプリ内でヘルスチェックを行っています」
Igor氏も「基本的にウォレット提供者は、可能な限り鍵を安全に保管することが最も重要だ」とし、Anant氏は「ウォレット提供者として、ユーザーにバックアップ、セキュリティ、保管の責任があることを教える義務がある」と見解を示した。
(取材/文・古田島大介)