中でも特にアフリカ南部の面積の3分の2を覆う「カルー超層群」という地層からディキノドンの化石が頻繁に見つかっているのです。
これはサン人の活動範囲と重なっており、さらにラ・ベル・フランスの周囲でもディキノドンの化石の発掘例が多数報告されています。
ブノワ氏も自らの足でラ・ベル・フランスを見に行った際、その周辺の岩石に露出したディキノドンの化石をいくつか見つけていました。
つまり、現地に住むサン人が西洋の古生物学者より以前にディキノドンの化石を発掘して知っていた可能性が大いにあり得るのです。
そしてブノワ氏は「ラ・ベル・フランスに描かれた”角のある蛇”こそ、サン人が化石を元に生前の姿を復元したディキノドンの姿である」と考えました。
それは今日の科学で正確に復元されたディキノドンの姿と照らし合わせるとよくわかるといいます。
ディキノドンは全長が1.2メートル程で、胴体が少し長く、体表面にイボイボの皮膚模様をもっており、口先にカーブを描いた2本の牙が生えていました。
これらの特徴はサン人が岩壁に描いた生物の姿と見事に一致しているのです。
ブノワ氏は「南部アフリカには他にこのような姿をした生物は存在していません。最も近いセイウチは地球の裏側にある北極圏に住んでいます」と指摘しました。
例えば、アフリカゾウやイボイノシシにしても2本の牙が頭の前方に向かって反り返っており、「角のある蛇」とは曲がっている方向が違います。
また体表面のイボイボは発掘されたディキノドンの皮膚ミイラからもしっかりと確認されています(上図の右下を参照)。
以上を踏まえると、サン人の描いた「角のある蛇」はディキノドンの姿である可能性も最も高いのです。