そこでフェーザー内相が言い出したのが、いつものことながら「民主主義の防衛」。“極右”AfDが広める難民に対する差別が社会に憎悪を振り撒き、この惨劇を招いた。「打つべきはAfD!」というのが、その趣旨だ。そして、あっという間に、28人のアフガニスタン人の重罪犯の母国送還を決め、特別便を仕立てて、30日の早朝、本当にカブールへ送り返してしまった。それも、「ようやく実施できて嬉しい」と自画自賛のおまけ付きだ。
後で分かったことだが、政府はその際、重罪犯にそれぞれ1000ユーロずつをプレゼントしたという。アフガニスタンでは1〜2年分の年収にあたる額だそうだが、何のために重罪犯にご褒美を上げなければならないのかの説明はなし。
なお、その後、独立系メディアのTE(TichysEinblick)が、カタールのドーハ(タリバンの在外公館がある)にいるタリバンの高官のインタビューに成功した。「28人はどうなったか」、「1000ユーロはどうなったか」という質問に対し、その高官は、「28人は、アフガニス タンでの前科がなかったことを確認し、母国への忠誠を誓った後、釈放される(現在、すでにほぼ全員が釈放された模様)。1000ユーロは各自のもので、タリバン政府とは関係のない話である」と答えた。あたかも英雄の帰還? それにしてもドイツは寛容な国である。
さて、9月1日に行われたザクセン州とチューリンゲン州の州議会選挙では、ザクセン州では1.3%ポイントという僅差で、CDUがかろうじてAfDを抑えて第1党となったが、チューリンゲン州ではAfDが32.8%の得票率で、CDUを9.2%ポイントも引き離して第1党となった。ところが、チューリンゲン州のCDUの筆頭候補は、「民主的な票による第1党は我々CDU」との理屈で、勝利宣言。