図5 新サンプラザプロジェクトの事業収支案(図6現時点の拡大)

その1か月後、2024年4月25日中野区議会総務委員会において「中野駅新北口駅前エリアの市街地再開発事業の検討状況について」が報告された。施工予定者の一者であったヒューリック株式会社が事業から撤退するという衝撃的なニュースであった。他者で穴埋めができるという報告であった。今思えば、何か崩れ始める音がしていたのかもしれない。

そして2024年7月上旬に東京都に事業認可申請を行った。承認が得られれば事業が開始され、権利変換による転出補償金の収受、中野サンプラザ解体などと進んでいくだけであった。

しかし冒頭に説明した通り9月19日に中野区議会で事業費が2693億円から900億円以上が増加し、事業が停滞するという事実が明るみになった。得られるはずであった400億円の転出補償金は少なからず今年度には収受できない。そして事業もゼロベースの可能性が示唆された。

4. 中野区にあたえるインパクト

中野区の予算は令和5年度決算ベースでいうと約2000億円、単年度収支ではマイナスとなり、余力があるわけではなく、貯金は799億円、借金は360億円で実質の貯金は439億円という財政状況である。ちなみに23区平均の貯金は1136億円、借金は211億円で実質の貯金は925億円である。

もし新サンプラザプロジェクトがご破算になった場合、衝撃は転出補償金だけではなく、以下のことが想定される。

転出補償金400億円がなければ、新区役所の建設費用のために借金した116億円の返済が滞ると年1億円程度の追加利払いが発生する可能性がある。また残りを貯金し、今後の学校建設・区民活動センター等の整備費用に充てる計画が崩れる。 中野サンプラザを管理所有する株式会社まちづくり中野21(同社の株は中野区が100%所有)は、現在40億円の借金をしており、借入金利子や固定資産税等で毎月3,000万円程度の経費が必要で、施工事業者へ早期の受け渡しできなければ、補填し続ける必要がある。 旧中野区役所庁舎の閉鎖管理に伴う維持管理経費等による負担増。 中野駅新北口から新サンプラザへつながるはずの駅前広場の接続先がなくなる。 中野駅新北口駅前に完成予定のバスターミナル、タクシープールにつながる地下道路は新サンプラザの下を通す予定であったために大きな計画の変更が求められる。

図6 予定されている周辺施設整備(サンプラザは現存のもの)