またサルたちの視線の偏りが高ければ高いほど、つまり負け候補者を見る割合が高ければ高いほど、勝者側の得票率が高いことが明らかになりました。
サルたちの視線は選挙の結果だけでなく、票数の差まで予測できたわけです。
興味深いことに、同様の予知能力が、人間の幼児にも備わっていることが示されています。
たとえば2009年に行われた研究では、幼児が当選した候補者を顔だけで当てられる確率が70%に達していることが示されました。
また2007年に行われた大人を使った実験では、候補者について何もしらない大人でも、幼児と同じ70%の精度で当選した候補者を選ぶことが示されました。
もしかしたら、政党や候補者への興味が薄い人々が住む国、または浮動票が多い国では、選挙結果は「顔採用」が蔓延し、政治家の質が落ちるのかもしれません。
研究者たちは「5歳の幼児が大人と同じように投票するということは、私たちの遺伝子の中に意思決定を作用する「何か」が存在しており、その「何か」はおそらくサルと同じである」と述べています。
では、その「何か」の正体はどんなものなので、サルたちは顔写真のどこを判断材料にしていたのでしょうか?
サルたちは人間のアゴを見ていた
サルたちは候補者のどの部分を見て勝敗を認定していたの?
謎を解明すべく研究者たちはサルたちの認定した勝者と敗者の顔の構造を比較分析することにしました。
するとアゴの突き出しレベルやアゴの広さ、そして顔の縦と横の比率、頬骨の狭さなどが得票率と連動していることが明らかになりました。
特にアゴの突き出しレベルは最も影響が強く、得票率の7~8%を占めていることが示されました。
また勝者と敗者の顔を比較すると、勝者のアゴは敗者のアゴに比べて平均2%ほど突出していることが発見されました。