ゲーム内でプレイヤーが操作しないノンプレイヤーキャラクター(NPC)の多くは、プログラムで定められた行動しかとらない。それはしばしば単調な動作となり、プレイヤーがゲームに飽きる原因ともなりうる。

NPCが同じ会話や行動しかとらないのは、技術上の限界であり仕方ないことと受忍されていたが、生成AIが生命感のある動作と会話能力をNPCに与えることで、この制約を突破できる可能性が出てきている。

本稿で取り上げるのは、カナダのエドモントンを拠点とするスタートアップ、Artificial Agencyだ。生成AIのゲームへの適用に取り組んでいる。

Image Credits: Artificial Agency

同社は人工知能研究の最先端企業、Google DeepMindの元研究メンバーにより共同設立された。AI研究者のみならず、トップクラスのゲーム開発者も同社に名を連ねている。

この未知なる分野を探るためにも、Artificial AgencyのCEOを務めるBrian Tanner氏へインタビューを敢行した。Brian Tanner氏は、20年もの人工知能の研究経験を持つGoogle DeepMindの元研究開発リーダーである。

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Artificial Agencyの開発する生成AIエンジンとは

―― 御社の開発する生成AIエンジンは、どういったことを可能にするのですか?
Brian: ゲーム内でのプレイヤーの実行時の意思決定をゲームに統合し、開発者の設計したAIエージェントへの行動に変換ができます。エンジンは主に3つの入力に基づいて行動を生成します。役割(「キャラクター」は誰で、その目標は何か)、知覚(キャラクターはどのように世界を見て観察するか)、そして行動(キャラクターが選択できる行動)です。ゲームからの動作の要求をしたとき、エンジンはこれらの入力とゲームの文脈に基づいて適切な決定をキャラクターに下します。