デービッドは編集者としては秀逸でも経営の才覚はそれほど強くなく、1960年代に入って日刊高級紙デイリー・テレグラフが日曜紙を創刊させ、ライバルのサンデー・タイムズが熾烈な販売競争を行うようになると、オブザーバーは苦境に追い込まれた。

1977年、オブザーバーは米石油会社に売却され、1981年には複合企業ロンロー社に買収された。

1993年、左派系日刊紙ガーディアンを発行するガーディアンメディグループ(GMG)の傘下に入った。オブザーバーの政治姿勢は左派リベラル系である。今ではガーディアンの日曜版的位置づけにある。

英国の新聞は部数が2ケタ台で落ちてきた

ネットの普及以来、英国の新聞発行部数は月間でもあるいは年間での比較でも、以前よりも二ケタ台で落ちてきた。ネットでニュースを読むことが習慣になってしまったのだから、この流れは止められない。

日曜日になると、保守系サンデー・タイムズやサンデー・テレグラフ、それにリベラル系オブザーバーを小売店に買いに行き、新聞を片手に抱えながら家に戻る。そんな光景がよく目されたものだった。

しかし、今やそんな牧歌的な時代は終わりを告げつつある。

ガーディアンとオブザーバーを運営するのがGMG社である。

ガーディアンはウェブサイト上の記事閲読を無料で提供してきた。会員になってもらう、寄付金を募るなどしてがんばってきた。オブザーバーのウェブ記事もガーディアンのサイトで読めるようになっている。

GMG社は、損失が重なるオブザーバーを売却することにした。2009年にも新聞ではなく、週刊誌に変えようとしたのが、反対運動があって、断念した経緯がある。オブザーバー紙は2021年以降発行部数を公表していないが、2021年時点では約13万6000部だった。今は10万部ほどに落ちているといわれている。

今回、買収に手を挙げたのが、新興のデジタルメディア「トータスメディア」である。