それなら江藤が文壇で後事を託し、SFCのポストも譲ったとされる福田さんとはどんな人かなと、興味が湧いたわけだ。

なので多くは読んでないけど、初期の2作品を文庫で合本にした『近代の拘束、日本の宿命』は、すごくいいなと思った。政策の提言と、福田さん自身の個人史とが、日本近代史という文脈を置くことでひとつに繋がっている。逆に世評の高い『日本の家郷』は、「俺の博覧強記を見ろ!」といった衒学性を感じてしまって、自分にはダメだった。

先日、ゲンロンカフェで共演した酒井信さんなど、病気の後で仕事をご一緒する人に、なぜか福田さんの関係者が多いのも、奇妙な縁である。

なにせ一世を風靡した人だから、当然に拙著『平成史』にも出てくる。こっそりバラすと、色んな言論人が出てくるこの本、なるべく自分(與那覇)にとってその人の「よかったところ」と「イマイチなところ」の両方が、伝わるようにと意識して書いている。