(※因果律を打ち破る数少ない研究としては去年の12月に東京大学から発表された量子電池の充電方法があたります)

東京大学が「因果を打ち破って充電」する量子電池を発表

一方、量子現象という観点からは興味深い見方もあります。

この現象を量子力学の観点から考えた場合、光子が原子雲を通過する方法の重ね合わせが作用していると考えられます。

量子力学では1つの光子が原子雲を通り抜けるときに複数の状態が同時に存在しており、原子雲の中の光子は遅延を起こしてしまう状態、また全く遅延を起こさない状態、さらには遅延がマイナスになってしまう状態が重なって存在していると考えられています。

このとき、特定の条件を採用することで、この重ね合わせの中から「遅延がマイナス」になっている光子を観測することができると考えられます。

あえて多世界解釈的な見方をとれば、遅延が起きた世界線、遅延がゼロだった世界線、遅延がマイナスだった世界線の中で、研究者たちの観測は遅延がマイナスだった世界線だったと言えるでしょう。

一方研究者たちは「私たちの観測は、マイナスの遅延が単なる偶然によるものではなく、この世界において物理的に意味のある量であることを示している」と述べています。

量子力学の実験結果にはさまざまな解釈が存在しており、主流・非主流の区別があっても、どれが真実であるかは断言できません。

また多世界解釈など非主流派の解釈を研究することで、思いもよらない知見が得られることもあります。

もしかしたら未来の物理学では、より優れた解釈が出現して、量子世界のモヤモヤを上手く解決してくれるかもしれませんね。

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元論文

Experimental evidence that a photon can spend a negative amount of time in an atom cloud
https://doi.org/10.48550/arXiv.2409.03680