カナダのトロント大学で行われた研究により、原子雲に向けて発射された光の粒子が、原子雲に入るよりも前に、原子雲から出てきてしまったことが実験的に観測されました。
これまでの研究により、液体や気体など媒体の中を通過する光を遅らせたり、完全に停止させるなど遅延の極大化が行われてきましたが、今回は逆に遅延をゼロを超えてマイナスにすることを実現したのです。
研究者たちによれば、この現象は光子に負の時間が流れていたと解釈できると述べています。
この奇妙な現象は、どんな原理で起きたのでしょうか?
研究内容の詳細は2024年9月5日にプレプリントサーバーである『arXiv』にて発表されました。
目次
- 遊園地は入らなければ出れない
- 量子の不思議を煮込む魔女の大釜「ルビジウム原子雲」
遊園地は入らなければ出れない
量子の世界は常識が通じない
遊園地の敷地に入った時間は、出る時間よりも必ず前になります。
この常識はお客だけでなく、遊園地のスタッフや上空を通過する鳥、銃弾のような無生物にも適用されます。
生物も無生物も一定の領域を「通過」するならば、入るのが先で出るのは後、逆はできません。
それは子供でもわかることです。
しかし量子の世界においては日常の常識が通じないことが知られています。
量子の世界では1つのものが2つの通路を同時に通ったり、何もない空間から粒子が現れては消えていくことが確認されています。
また量子の世界の曖昧さは、物体の場所だけでなく、時間にも及ぶことが示されており、実験室レベルでは過去と未来を干渉させることにも成功しています。
二重スリット実験を物理的スリットではなく「時間の切れ目」で再現成功!
さらに物体の持つ電荷のような「性質」を、物体の「質量」から切り離すことも可能とする説も提唱されています。
粒子の性質だけを粒子の質量から分離する量子実験「量子チェシャネコ」とは?