新たな研究では、量子世界による新たな常識破りが起きたことが実験的に示されました。
論文のタイトルも直球であり「光子が原子雲の中で負の時間を過ごすことができるという実験的証拠(Experimental evidence that a photon can spend a negative amount of time in an atom cloud)」というワクワクしたものになっています。
今回は研究の全貌をまず4コマで紹介し、続いて深い解説に入っていきたいと思います。
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なお4コマは負の群遅延という現象を概念的に説明したものであり「負の時間」や「入るよりも先に出る」といった表現も、観測データをもとにしたものです。より正確には入力パルス(入る光)のピークが出力パルス(出る光)のピークよりも早く現れるという現象です。このような入る光が出る光よりも早くピークが訪れることを本文では「入るより先に出る」と表現しています。
マンガのようにハッキリと巨大な光の球が出入りする様子が見れるわけではありません。
媒体の中の光の速度
アインシュタインの相対性理論では「光の速度は不変」であるとされています。
ただこの不変というのはあくまで真空中での話に限ります。
音が空気や水によって伝達速度が変るように、光もまた伝達する環境によって影響を受けます。
光が液体や気体のような物体に入ると、光の粒子が周囲の原子との相互作用を起こします。
物体内に光が侵入すると、物体内部の原子との間で吸収と放出が起こり、そのぶん光の速度は低下していきます。