■1,300年前のエピソードが最高
今回取材に応じてくれたのは、奈良女子大学協力研究員の前川佳代さん。まずは、甘葛煎がいつ頃使われていたのか聞いた。
前川さんは、「奈良時代初期の貴族である長屋王の邸宅跡で使われていたことが分かっています。全国で製造され、都へ運ばれました。甘味料として菓子や料理はもちろん、お香(薫物)に使う香材のつなぎや薬にも使用されていました」と説明する。
奈良時代初期ということは現在から約1,300年前になる。これほど昔から甘味料があったとは驚きである。
気になる味に関して、前川さんは「ツタから作った甘葛煎は、口にふくむと強い甘みを感じますが、瞬時にその甘さがなくなります。この甘さがスッと引く、というのが甘葛煎の特徴です。雑味がない、さわやかな甘みです」と話す。