期間は18か月。工場の組み立てラインを始め、ファイナンス・マーケティング・セールスなどさまざまな部署をまわり、海外のプロジェクトへも参加する。その間、ひとりひとりにトップマネジメントのメンター(知り合いのメンターは本社役員だった)がつく。

応募条件はウェブサイトに書かれていないので正確にはわからないが、以前に聞いた条件はこんな感じだ。

・国籍は問わない ・修士以上の学位(予定) ・ドイツ語が流暢である ・母国以外の国で、1年以上勉強あるいは働いた経験がある

修士以上や留学(か仕事)1年以上となると、結局学歴なの? 仕事ができるかどうかはわからないでしょう?と思うかもしれないが、学生は卒業までに休暇を利用してあちこちの企業でインターンシップに参加しており(人気のインターンシップはそれ自体に選抜がある)企業応募時にはその職場からの推薦状も提出してアピールするのが普通だ。

プログラムを終えた参加者は行きたいポジションに応募するが、プログラム出身の経歴は、選考で有利になる。自ら応募しなくても、メンターの役員と仲間の人的ネットワークで声がかかる可能性もある。

私のドイツ赴任時の仕事はプロフィットコントローラー(利益計算・損益計算書の分析・プロジェクト計算をする仕事)だったのだが、同僚の一人がそのプログラムの出身で、「ここで2年くらい働いた後、マーケティングなど他の分野に移る予定だ。ここに長くいると、コントローラーという専門職の色がついてしまうから」と言っていた。

日本以外の先進国の会社員といえば、皆専門を極めようとしていると思いがちだが、さまざまな分野・違う地域で経験を積み、あえてジェネラリストの経歴を作る人もいる。それが幹部候補生のエリートだ。

入社の段階で、国際的な環境で耐えられる優秀な人を選んでおく。その人たちは自律的に転勤をしてリーダーとしての経験を積む。マネジメントへのFast-track(近道)を準備する理由の一つは、変化の速い市場の中での多忙な業務に耐えられる若い幹部の育成だ。