海外では、幹部候補と管理職候補は明らかに分けて育成されるケースが多い。そのことがよく分かるのが、カルロス・ゴーン氏の経歴だ。

20年以上も前になるが、1999年6月、窮地におちいった日産自動車の再建を託されてカルロス・ゴーン氏が最高執行責任者として日本にやってきた。

ルノーの上席副社長との兼任で当時45歳。上席副社長には42歳で就任しており、創業者でもないのに、この若さでグローバル企業の幹部への抜擢は日本企業・日本人ではまずないだろう。

ゴーン氏のそれまでの経歴を見ると、24歳でミシュランに入社し、27歳でフランス国内のル・ピュイ工場の工場長、30歳で南米ミシュランの最高執行責任者、31歳でブラジルミシュラン社長、35歳で北米ミシュラン社長、ルノーに移り上席副社長になったのが42歳である。

ゴーン氏はフランスの理工系トップであるエコール・ポリテクニークで学んだエリートだ。27歳で工場長に抜擢され、その後もリーダーを歴任しておりエリートコースの典型だと言えるだろう。

このように、海外ではエリート社員に幹部へのFast-track、すなわち近道が用意されていることが少なくない。日本の多くの企業が「大卒の総合職」で一括採用し、東大卒もその他の大卒も同じ給料で同じスタートラインに並び、その後少しずつ昇進に差がつくのとは大きく違う。

幹部候補は別枠採用

こんな企業もある。わたしが勤めていた企業のドイツ本社(メルセデス・ベンツ)では、幹部候補のエリートは別枠で採用していた。

外資系に勤めている人の多くは、本社が外国にある企業の日本子会社に勤めている(現地採用)。私もそうだった。

他方、本社や世界の現地子会社で働く本社採用の人の中に、通常の採用とは別枠で選ばれた少数の「幹部候補のエリート」がいた。

本社ウェブサイトにあるInspire-the Leaders’ Labがそれで、書類選考と丸1日のチームワークやリーダーシップの実技を経て選ばれた学生たちが、入社後、特別なマネジメントプログラムに参加する。