しかし、その条件やメカニズムについては明らかになっていません。
そこで今回、征矢氏ら研究チームは、ラットを用いた実験により、PTSDと運動の関係性を分析することにしました。
習慣的な軽運動がラットの恐怖記憶の消去を促進
実験では、まずPTSDの動物実験モデルとして、電気刺激によってトラウマを植え付けられたラットが準備されました。
このラットは、過去の経験から、電気刺激を与えずとも、チャンバー内に置かれるだけで立ちすくみ行動(恐怖反応)を起こします。
そしてこのラットには、動物用のランニングマシンを用いて4週間の運動を行わせ、その後チャンバー内に入れるテスト(計2日間)で、立ちすくみ時間の比較を行いました。
ちなみにラットたちは、①低強度運動群、②中強度運動群、③安静群 の3グループに分けられました。
その結果、最初はどのグループのラットも立ちすくみ行動を示しましたが、習慣的に運動を行ったラットは、徐々に立ちすくみ時間が減少しました。
チャンバー内に置かれた直後は、3つのグループすべてで、立ちすくんでいる時間の割合が大きいですが、その後は、運動群と安静群で大きな違いが出ます。
運動を行った2つのグループでは、運動強度にかかわらず、時間の経過と共に、立ちすくみの減少が見られたのです。
しかも運動群の立ちすくみ時間の減少はテスト1日目から有意に見られ、二日目も同様でした。
これらの結果は、たとえ低強度だったとしても、習慣的な運動が恐怖反応を低減することを示しています。
では、どうして運動が効果的だったのでしょうか。
習慣的な軽運動がPTSDの治療や予防に役立つかも
PTSDの治療には、恐怖記憶に関連する過剰な反応を減らすことが重要です。