いくつかの産業、特に原油やガスといった実世界の構成物が重大な産業では、ソフトウェア革命は既存企業にとって絶好のチャンスを提供する。しかし、多くの産業において、新たなソフトウェアのアイディアは、新たなシリコンバレー流のスタートアップ企業の登場という結果を招き、既存産業に不純物として侵入してくることとなる。この先10年、既存企業とソフトウェアの力を得た反乱者との間の戦いは熾烈なものとなるだろう。創造的破壊」という言葉を生み出した経済学者のジョゼフ・シュンペーターは誇りに思うだろう。

「国破れて著作権法あり」はシュンペーターの創造的破壊について以下のように紹介した。

シュンペーターは母国オーストリアの財務大臣やドイツのボン大学教授を歴任した後、ナチスから逃れてアメリカに渡り、ハーバード大学で教鞭を取った。イノベーションの本質は創造的破壊(creative destruction)にあると指摘。経済発展というのは新たな効率的な方法が生み出されれば、それと同時に古い非効率的な方法は駆逐されていくという、その一連の新陳代謝を指し、持続的な経済発展のためには絶えず新たなイノベーションで創造的破壊を行うことが重要であるとした。

ソフトウェアの力で創造的破壊に成功した反乱者

「国破れて著作権法あり」は続ける(世界時価総額ランキングは最新のものに差し替えた)。

イノベーションについての名著にクレイトン・クリステンセン ハーバード大教授の『イノベーションのジレンマ』がある。「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」という副題がついているように、イノベーションが大企業からは生まれにくいことを説いた教授は、イノベーションを持続的イノベーションと破壊的イノベーションに分類。

ハードディスク業界などの例をとりあげて、実績ある企業は、ごく単純な改良から抜本的なイノベーションまで、持続的なイノベーションをリードする技術力を持ってはいたが、破壊的技術を率先して開発し、採用してきたのは、いつも既存の大手企業ではなく、新規参入企業であることを実証した。