この3大投資顧問会社が大株主になっている企業は、かなり深刻な悪材料が出てもめったに大崩れしません。ですが、この鉄壁の擁護体制に3つのほころびが生じています。
まず、創業CEOジェンスン・フアンを筆頭に今年の初夏からエヌヴィディア幹部役員が盛大な自社株売りに転じていることです。自社の株価についてかなり深刻な悲観材料がなければ、これほど大量の自社株売りは出ないでしょう。
次のほころびは、大手投資銀行の中でも逃げ足の速さで定評あるゴールドマン・サックスが6月に刊行したレポートで明白に反生成AI・反エヌヴィディアに転じたことです。
この方針転換は、レポート刊行当時はジョー・バイデン、その後カマラ・ハリスに変わった民主党公認大統領候補をマグニフィセント7全体を叩く「反財閥の英雄」に仕立て上げて、トランプに対する劣勢を挽回するための奇策ではないかと思います。
ウェブマガジン『増田悦佐の世界情勢を読む』の「もし私が民主党の選挙参謀だったら」号で詳述しておりますので、ぜひお読みください。
3つ目のほころびとして、上段の大株主リストで第9位に入っているJPモルガン投資顧問まで、9月初旬のレポートで反生成AI・反エヌヴィディアに転じたことです。JPモルガンはゴールドマン・サックスほど敏捷ではありませんが、それだけに民主党リベラル派を支持する金融業界の大物たちの最大公約数的な見解がわかる企業です。
そこまで反生成AI派に転じたということは、民主党リベラル派最大のスポンサーであるハイテク大手や金融業界大手のあいだでコンセンサスができていることを感じさせます。
少なくとも大統領選が終るまでは派手に「財閥叩き」をやらせて、共和党=大富豪の味方、民主党=弱者の味方という現実とはかけ離れた固定観念にすがりついて大統領選を有利に進めるという作戦です。
実際にこの作戦がかなり有効かもしれないことは、世論調査より頼りになるベッティング業界のオッズ調査で、トランプ有利の数字とエヌヴィディアやマイクロソフトの株価上昇がきれいに連動していることでもわかります。