すると驚いたことに、普通の星状細胞が再プログラムされ、幹細胞としての機能を持つようになったことが判明。
さらに再プログラムされた幹細胞は分裂を開始し、新しいニューロンの前駆体(ニューロンに成長する細胞)を生成することに成功しました。
また、この過程にはDNAメチル化を促進する「DNMT3」という酵素が重要な役割を果たしており、この酵素が欠けている変異体では、幹細胞への再プログラムがうまく進行しないことも確認されました。
しかし、人工的なパターン変更が自然界でも起きている現象であるかどうかは、まだ明確ではありません。
そこで研究者たちは、脳内の自然な回復プロセスを調べるために、マウスに脳虚血(血流不足)を引き起こす実験を行いました。
脳虚血では、血液供給が不足して脳細胞が酸素欠乏に陥り、一部のニューロンが死滅します。
以前の研究から、このような脳損傷が起きた場合、脳内で新しい神経細胞が生まれることが知られています。
脱メチル化によるロック解除の仕組みはこのプロセスでも起きていたのでしょうか?
調査にあたっては、生後2か月のマウスの脳動脈を22分間にわたり締めて虚血と細胞死を再現し、部分的なニューロンの死滅を引き起こしました。
そして2日後と21日後に脳室下帯からもともとは普通の星状細胞であったものを取り出し、ロックパターンが変化しているかを調べました。
(※事前に普通の星状細胞だとわかるように目印をつけておきました)
通常の星状細胞が幹細胞としてのロックパターンに移行していることが確認されました。
また、同様の変化が脳室下帯の外側でも見られ、神経前駆細胞の数も増加していました。