ルールを設定し、配慮と遠慮のラインを明確にしなければ、社員は個々人の価値観でさまざまな要求を会社にするようになるでしょう。結果として社員同士がまとまらず、社長の場当たり的な判断で社員に際限なく仕事を求め、社員が疲弊していくことになりかねません。

評価制度が整うことで、会社が社員に求めていることと、社員が会社から求められていることが一致するようになります。明確で透明性の高い評価制度、報酬制度の運用により、社員の待遇に対する納得感を高め、社員にとっての仕事のやりがいを醸成していくこと、そして、会社が求める方向で社員がしっかりと機能することが実現できます。

ルールと評価制度の二つが整っていることが、バランスの取れた会社の条件の一つと言えます。

欠くことのできない歯車とは

冒頭に挙げた言葉の一節、「願わくば、その会社にとって欠くことのできない歯車になって欲しい」について考えるとき、会社の視点と社員の視点が交差する部分に、非常に興味を覚えます。

会社側の視点で見たとき、代替不可能な欠くことのできない歯車が存在することは許されないのです。その歯車がなくなると会社が継続できなくなってしまう状況になるためです。継続を前提に運営をしている会社という組織において、このような状態は即座に改善しなければなりません。

一方で、社員から見たとき、自身が欠くことのできない歯車であると感じることができる状況は望ましいものです。誰もが、「この会社で自分は代替可能な存在だ」と思って働きたくはないでしょう。

無機質な歯車に、代替不可能性を付与させるという矛盾を解消する方法は、会社と社員を共に成長させていくことです。成長できることが、本物の歯車と、歯車としての人間の違いです。

「会社が成長することで、社員が成長する」 「社員が成長することで、会社が成長する」

この相互作用が起こる状況になることで、社員は歯車として維持されながら、その瞬間において、代替不可能な存在になるのです。