MITの研究者たちが行った調査方法は上の図のように「縦に並べたボタンと同じ数の石を横に並べる」というものでした。
なんでもない作業のように思えますが、実際は違います。
縦に並べたボタンと同じ数の石を横に並べるには、縦に並んだボタンを一度脳内で「数」に変換する情報処理が必要だからです。
研究者たちはこのテストを、アマゾンの奥地に住むチマネ族の人々に行ってもらいました。
チマネの人々の教育水準は限定的であり、知っている「数字の名詞」の限界値は個人によってバラバラになっています。
そこで研究者たちは知っている「数の名詞」の限界が6~20までの人々15人(低カウント能力者)を特定して、石を並べる実験を行ってもらいました。
結果、正確な数の石を並べられる能力は知っている「数の名詞」に大きく依存しており、石を並べる正確さは知っている数字の限界値より「やや低い」ことが判明します。
例えば10までの数字の名前しかしらない人の場合、正確に並べられる石の数は8個程度となっており、15までの数字の名前を知っている人は扱う石が13個程度になると間違いを犯すようになりました。
つまり10までしか数字の名前を知らない人にとって8は既にいわゆる「たくさん」となって近似値(だいたい)で表現する対象となっており、15までの数字しか知らない人は13個あたりからが「たくさん」となって正確さが失われていたのです。
また実験に協力してもらった低カウント能力者たちの全体的な成績を分析すると、間違いが「4~5」あたりから増え始め、扱うボタンと石の量が増えるにつれ、間違いの幅も大きくなっていくことが判明しました。
この結果は、「数字」をほとんど知らない人たちにとって、「5」という数が最初の壁になっていることを示します。