これらの領域は、他者の意図や思考の理解、他者との協調といった社会的認知に深く関わっています。

その一方で「親から子供への愛情」には、他の対人愛には見られない脳領域の活性化が確認できました。

親の愛情では、大脳の深部にあり、計画や意思決定に深く関与する「線条体(せんじょうたい)」が強く活性化していたのです。

研究者は「子供を育てるには多大な資源や労力が必要であり、それを得るために計画を練り、意思決定することが重要である点を踏まえれば、線条体が活性化するのは進化的に理にかなっている」と説明しています。

対照的に、見知らぬ人への愛情は他の対人愛で見られたのと同様の領域が活性化していたものの、その活性化の強度ははるかに小さなものでした。

つまり、脳の活性化レベルを見れば、その人が相手を大切な友だちと見ているのか、赤の他人と見ているのかがわかるでしょう。

もし自分がケガしたときに、親友と思っている人が下図の右のような反応を示していたら大変ショックですね。

画像
「見知らぬ人への愛情」は極端に活性レベルが低い / Credit: Aalto University – Finding love: Study reveals where love lives in the brain(2024)

それから「ペット」と「自然」への愛情は主に、脳の報酬系と視覚野を活性化させており、対人愛のような社会的認知に関する脳領域はあまり関与していませんでした。

視覚野は大脳皮質の後頭葉に位置しており、目で見たものの情報を受け取る部位です。

報酬系は中脳から大脳辺縁系を経て、前頭前皮質に至る回路にあり、主に心地よい刺激や快感に反応して活性化します。

動物を目で見て「可愛い」と感じたり、自然の中にいて「心地いい」と感じることから、これらの脳領域が活性化することも納得でしょう。

画像
左から「ペットへの愛情」「自然への愛情」/ Credit: Aalto University – Finding love: Study reveals where love lives in the brain(2024)