なお明治時代後期、おじいさんは「畑を荒らした」という理由で捕まえていたものの、1960年代頃からは「タヌキが悪口を言ったり馬鹿にしたりから」という理由で捕まえるようになっており、タヌキの捕獲理由は時代が下るにつれてどんどん寓話的な表現になっていきました

またタヌキがおばあさんを殺害するシーンですが、殺害方法については非常にバラエティに富んでおり、一番メジャーな杵(きね)による撲殺だけでなく、絞殺や刺殺、果てや飛びつきまで様々な方法が用いられていました。

さらにタヌキが殺害したおばあさんを調理してばばあ汁たる料理を作りそれをおじいさんに食べさせるシーンは、江戸時代はおじいさんが「ばばあ臭い」と料理を怪しがっている展開になっているものの、明治時代後期には「おいしい」といって何度もおかわりする展開になっています。

しかし1950年代頃からは一転してタヌキはおばあさんに怪我を負わせるだけになり、1960年代半ばまでおばあさんが殺される作品は皆無だったのです。

これは、戦後の改革のもとで子供には勇ましくすることよりも仲良くすることを求めるようになり、その一環として昔話内の殺人描写が省略されるようになったものであるとされています。

その後1960年代後半以降は昔話ブームもあって原作通りに伝えなければならないという認識が高まったこともあり、おばあさんが殺害される作品も徐々に増えていきました。

しかしばばあ汁に関しては引き続き省略されたり、登場してもあまり注目されなかったりしていており、今に至るまで復権できていません。

どんどんマイルドになっていったウサギの復讐

「カチカチ山」尾形月耕作、明治時代はまだ櫓でタヌキを殺す展開が主流であった
「カチカチ山」尾形月耕作、明治時代はまだ櫓でタヌキを殺す展開が主流であった / credit:wikipedia

作中でウサギがタヌキに行う復讐は「タヌキが背負っている柴に火を付ける」「火傷によく効く薬として唐辛子入りの味噌を塗る」「泥船に乗ったタヌキを水中に沈める」の三回に分けることができます。