この結果は、ニューロイドは他の細胞との間に「シナプスのような」接合部分を介してコミュニケーションしていることを示します。
さらにニューロイドは消化システムに侵入してきた細菌を除去する働きもありました。
一方で、体内や消化システムに存在する共生細菌に対しては、ニューロイドは攻撃を控えます。
この結果は、ニューロイドは細菌叢とのバランスをとるための機能も持っていると考えられます。
他の細胞との長い腕を介しての接続、神経伝達物質の分泌、シナプスを介してのコミュニケーション、細菌叢との密接な関係……これらの要素は全て、人間の腸を囲むニューロンにも存在しています。
「腸内細菌」の多様性がある人ほど「孤独を感じにくく、賢くなれる」と判明
以上の結果から研究者たちは、海綿動物の消化管周辺に存在するニューロイドは、ニューロンの原形(前駆体)であると結論付けました。
ニューロンの原形となるニューロイドの本来の役割が、消化管を維持するためのシステムならば、脳は腸を構成する細胞の一部が変化して作られたことになります。
つまり腸は第2の脳ではなく、脳が第2の腸ということになるでしょう。
近年の研究により脳と腸そして腸内細菌の結びつきの強さが示されるようになってきましたが、それもそのはず。
極論すれば、脳は腸からうまれたと言えるからです。
腸内細菌叢は脳より古い起源をもっている
今回の研究により、ニューロンの謎に包まれていた起源が、消化システムを制御する細胞(ニューロイド)から派生した可能性が示されました。
ニューロイドで同じような遺伝子が働いているだけなく、ニューロンのシナプスにソックリな接合部を持ち、同じ神経伝達物質を分泌し、細菌叢の維持にもかかわっていました。
神経系が存在しない海綿動物の消化システムでみつかったニューロイドは、その類似性から、後のニューロンの原形であり、ひいては神経系や脳の起源となったと考えられます。