そのため消化システムも消化「管」ではなく、出入り口が同じため消化室と呼ばれています。
また他の多細胞動物に存在しない非常にユニークさとして、脳どころか神経もニューロンもシナプスも、さらには筋肉細胞さえも持っていない、唯一の多細胞動物だという点があげられます。
(※サンゴやヒドラなど一見すると植物っぽい動物たちでも、体を動かす筋肉や、筋肉の動きを制御する神経系が存在します)
そのため研究者たちは、海綿動物の体に含まれる全ての細胞型を調べ上げ(遺伝的プロファイリングをして)、ニューロンの原型となるような細胞が含まれているかを調べました。
結果、海綿動物には18種類の細胞型が存在していることが判明したほか、そのうちの1つ「ニューロイド」と名付けられた細胞で、神経伝達物質の分泌が行われている可能性が高いと判明します。
神経系が存在しない海綿動物で、いったいなぜ神経伝達物質の分泌が行われているのでしょうか?
結論から言えば、脳は腸の一部が変化して誕生した臓器だからです。
脳は腸の一部が変化して誕生した
神経系やニューロンがない海綿動物でなぜ神経伝達物質が必要なのか?
謎を確かめるため研究者たちはニューロイドが他の細胞とどのように接触しているかを調べました。
すると興味深いことに、上の図のように、ニューロイドは海綿動物の消化室の周りを包み込むように存在しており、多数の消化システムの細胞と細長い腕で接続されてると判明します。
また接合部分を詳しく調べると、ニューロイドの伸びた腕の先には複数の小胞(神経伝達物質が詰まったものと推測)が含まれた人間のシナプス(前部)とソックリな構造が含まれ、消化システムの細胞のほうには人間のシナプス(後部)に存在する受容体と酷似した受容装置が発見されました。