ローザンヌでは6月に最後の『ボレロ』を踊りましたが、東京で踊る『ボレロ』も最後ということになるでしょう。2024年の終わりをもって、ダンサーという立場から完全に身を引くために調整をしています。なぜならこの新しい芸術監督という仕事が非常にエネルギーと時間を使う仕事だからです。でも、モーリスの仕事をジルが続けてきたように、自分もそれを引き継いでいくことが役目だと思っています。

ダンサーとして最後に踊る『ボレロ』『バレエ・フォー・ライフ』

――日本で最後に踊る『ボレロ』について。初めて踊ったときの思い出や、今現在の作品への想いなどを教えてください。

ファブロー:『ボレロ』に関しては、最初に踊ったのは2011年のイタリアのフェスティバルで、ジルが「踊ってみないか」と提案してくれたんです。ここでうまくいけば、三か月後にパリのパレ・デ・コングレという非常に大きな会場で踊ってもらうという風に言われました。

私はフランス人なので、パリの大きな会場でボレロを踊るチャンスがあるということで、本当に嬉しく、夢が叶うという気持ちで最初の『ボレロ』をスタジオで踊ったことを覚えています。最初の頃はうまくコントロール出来ていなかったと思うし、いつ踊ってもとても難しい作品です。

年を重ねて自分も成熟してきましたし、身体も年を重ねて変化しています。『ボレロ』という作品はどうしても、人間がその作品よりも強くあるということが難しい踊りなのです。本当に作品自体が物凄い力を持っていて、人間はダンスに従わざるを得ない。ダンサーが作品に打ち克つことが出来ない、とても魔術的で神話的な振付です。これを踊って、30年のキャリアの円環を日本で閉じられることをとても嬉しく思っています。

――全編クイーンの音楽を使った『バレエ・フォー・ライフ』は、ジュリアンさんが10代から踊られてきた作品で、早くからメインキャラクターのフレディ役に抜擢されて大変な人気となりました。