ファブロー:『バレエ・フォー・ライフ』は、初演(97年)の主演ダンサーとは違うように演じる必要があるというところから始まりました。そのときモーリスが言ってくれたことがヒントになっていて「ダンサーとしてのジュリアンではなく、ロック・スターとしてのジュリアンを舞台の上で見せて欲しい」と。

外見の面では私はフレディ・マーキュリーに似ていないので、フレディの発するオーラというものからアプローチしていきました。その際にはフレディの身振りとか、ヴェルサーチの衣装といったものが大きなインスピレーションを与えてくれましたね。フレディ以外のミック・ジャガーやデヴィット・ボウイのイメージもミックスして、ロック・スターの役を作っていきました。

モーリスはたくさんのアドバイスを与えて導いてくれ、「それはちょっとやりすぎだ」「そっとの方向性はよくないよ。別のやり方でやってみよう」とか、色々試しながら作っていったんです。感情の面でもコントラストをつけていかければならないと言われました。

すごく優しい面もあれば、アグレッシヴな面もあって、様々な感情のパレットを引き出すことを求められます。日本やフランス、南米でもたくさん踊った役で、自分のキャリアを振り返ってもとても重要な役です。年を重ねて、フレディが亡くなった年に近い年齢で最後にこの役を踊るのも、不思議な偶然を感じます。

Ballet for Life(バレエ・フォーライフ)©Kiyonori Hasegawa

ダンサーを引退する決意をしたとき:自然な変化が次々と起こった

――ファヴローさんご自身、ダンサーとしてのキャリアには未練はないのでしょうか。

ファブロー:今回の物事というのが、自分にとって大変ナチュラルな形で進んだように思います。ダンスをやめるということも、これが訪れるタイミングだったと言えます。

実は既に、ジル・ロマンにも「そろそろダンサーとしてのキャリアを終わらせることを考えている」という話をしていたんです。前回の2021年の日本ツアーの後にアキレス腱の断裂という怪我をして、一年間踊れない時期があり、自分にとってきちんと体調を整えておくということが結構難しいことになってきていました。