筆者は15年ほど前、神奈川県西部の当時まだ少なかった複合型施設の立ち上げ期に関わっていた。サ高住にクリニック、訪問看護、ホームヘルプ、ケアマネを併設し看取りまで行う。元々は近隣の大学病院の出口、後方ベッドを想定していた。その施設建物のデベロッパー、地域の中堅不動産業者がその後同様の介護施設を複数展開し大手に売却。その元役員がホスピス老人ホーム業者の一つを立ち上げている。

当時から既に社会的入院は医療経済と本人のQOL両面から不適切とされていたが、介護施設で看取りに対応するところは少なく、問題視され始めていた。いわゆる「看取り難民」問題である。一方でガンが死因一位となり、ホスピス、緩和ケアによる苦痛緩和しての看取りの必要性も知られ始めていた。

この二つのニーズを解決するソリューションが生まれれば、超高齢化多死社会で大いに歓迎されるべき介護そして看取りインフラになるはずだったが、実際には暴利を貪るエセホスピスビジネスに成り下がってしまった。

ちなみにこれまで終の住処とされてきた特養(特別養護老人ホーム、介護保険制度上は介護老人福祉施設)は、営利企業は設立できず、多くは社会福祉法人立である。ところが特養は広い土地と大規模な建物を必要とする。結果、大地主の農家が一族で理事になり社会福祉法人を設立し、多額の補助金で施設を建て高額役員報酬を取りベンツ乗り回す、社福ビジネスとも囁かれた。

しかし広い土地と億単位の補助金を浪費する大型特養は、自治体の財政負担が大きく新設計画は縮小してきた。しかし介護施設需要さらに看取り需要は増えるため、介護施設はやこれまで以上に必要になる。介護保険制度による介護の市場化、エセホスピス問題はそこに端を発する。

看取りの場としての介護施設の現状:不正・不適切請求の手口とは?

さて、では「看取りの場となる介護施設」とは現状どのような場か。

筆者は2年ほど前、「のんびりしようと」とあるチェーンの有料老人ホームに転職した。そこが奇遇にも上記会社の施設を一括買収して大手となった事業者である。正直、悪評があったが、まあ行ってみて自分の目で確かめて、などと呑気に考えていた。10年ほど前にも介護職養成講師となったとき、関連の有料ホーム(別な大手チェーン)を紹介され兼務していたが、忙しくはあったが楽しくもあったからだ。