5.1%のさらに0.4%未満では、とても話になるまい。こんな状況なのに「現在最も多く使われているのは廃食用油からつくられたSAFです。」なのだ。
食料等との競合に関して言えば、世界のバイオ燃料生産は2021年で5000万トンにも上るが、原料の多くはパーム油・大豆油などで、廃食用油は1割程度に過ぎない。すなわち、他に本来的な用途があるのに、いきなり燃料化され燃やされている油脂類が大半なのである。我々は、かなり以前からこれを問題視し反対していた(「幻想のバイオ燃料」その他参照)。
このように、バイオ燃料はディーゼル油・バイオエタノール共に多くの問題を抱えている。化石燃料と比べて量的に少なく、製造工程を含めるとエネルギー収支が不利(→繰り返すが、決して「カーボンニュートラル」ではない!)、かつ価格的にも安くできない(栽培や収集・加工等にコストがかかるから)。また、原料によっては食料需要を圧迫するという倫理的な問題もある。
バイオ燃料推進派は、実際は問題だらけなのに、全てに目を塞いで「バイオ燃料はカーボンニュートラル、脱炭素に役立つ」との呪文を唱えているだけなのだ。
以上から、結論は明らかだ。SAFはA)バイオ燃料系、B)合成燃料系ともに大きな問題を抱えている。
バイオ燃料は上記した種々の問題があり、持続可能性にも疑問がある。基本的に、バイオマス資源に関しては食料用途が優先で、燃料化は最後に回すべきである。
合成燃料系は、エネルギー収支的に正味でCO2削減になるか疑問が多く、実現可能性は水素の入手可能性に大きく依存するので、水素社会に展望が開けない限り頼りにはならないだろう。要するに、SAFは名前の通りのSustainable:持続可能とは言えない燃料なのだ。
しかし、悲観するには及ばない。航空業界は現在、世界全体のCO2排出量の約2.5%を占めているとのことだが、この程度のエネルギーをSAF以外の化石燃料で賄ったとしても、大気中CO2濃度には殆ど影響しないからだ。前稿で述べたように、人類起源のCO2は、毎年約2ppmずつ増えているうちの高々5%、つまり0.1ppm程度に過ぎず、その約2.5%ではもはや測定誤差未満になるだろうから。