今回の派閥から所属議員にわたった政治資金パーティーの「還付金」ないし「留保金」(議員が購入者から受領した売上金の一部を派閥の口座に送金せず手元に留保するもの)も、収支報告書に記載しないよう派閥側から指示されていたというのだから、議員の側は、どの政治団体の収支報告書にも記載しない前提で「裏金」として受け取り、そのまま、どの収支報告書にも記載しなかったということだ。

「収支報告書に記載しない金」として供与されたということは、政治団体の収支報告書の記載の対象ではない「政治家個人に対する寄附」と考えるのが自然だが、それは、「違法寄附」となる。

政治資金収支報告書の虚偽記入の法定刑は禁錮5年以下・罰金、会計責任者が作成義務を負い、政治家本人の関与は間接的だ。

一方、「政治家個人宛の政治資金の寄附」と認定されれば、政治資金規正法21条の2第1項に違反となり、法定刑は禁錮1年以下・罰金と虚偽記入と比較すれば軽いが、政治家本人が直接的に処罰の対象となり、罰金刑に処せられただけでも議員失職となる。そして、その寄附が政治家個人に帰属したことになり、所得税の課税の対象となる。

もちろん、裏金議員は、議員失職にはなりたくないし、納税もしたくないので、「政治家個人宛の政治資金の寄附」であることは、なかなか認めないであろう。

だからこそ、今回、全国から応援検事を集めて大捜査体制で捜査を行った検察は、少しでも「政治家個人宛の政治資金の寄附」であることを認めさせる方向で追及すべきだったと、私はかねてから主張してきた。

そういう捜査を行っていれば、82人の「裏金議員」の中に議員本人も「政治家個人宛の政治資金の寄附」であったことについて言い逃れができない事例も少なからずあったはずだ。

政治家個人に帰属していたと思われる丸川珠代氏の裏金

その典型例が、神戸学院大学上脇博之教授と私の連名で、「政治家個人宛の寄附」の事実で告発した丸川珠代参院議員の事例だ(【「この愚か者めが!」丸川珠代議員への「政治家個人宛寄附」告発の“重大な意味”】)。