裏金に関する政治資金規正法違反で、堀井氏だけ、特に刑事立件され起訴される理由があるとすれば、同時に略式請求された事件、有権者に対する香典・枕花の供与の公選法違反との関係であろう。

しかし、82人の「裏金議員」の多くが主張しているように、「派閥からの還付金の単なる収支報告書への不記載であり、全額政治活動のために使っていて、実質的には問題ない」ということだとすると、それとは全く別個に香典等の寄附の公選法違反が発覚したからと言って、裏金の「単なる手続上の違反」が、突然、処罰すべき政治資金規正法違反と評価されるのもおかしい。この堀井氏の1700万円の収支報告書虚偽記入だけが起訴される理由にはならないはずだ。

一部で報じられているように、堀井氏は派閥から受領した「裏金」を原資として香典等を有権者に渡していたことによって、悪質性について評価が変わったということであれば、1700万円の虚偽記入の処罰について、一応理屈は通る。

しかし、その場合、もう一つの疑問が生じる。

今回、堀井氏は、「衆議院議員の公職にあった者」つまり「公職の候補者」として、選挙区内の有権者に香典・枕花を供与したということで、公選法199条の2第1項(「公職の候補者等は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない」)違反で起訴されている。

「公職の候補者等を寄附の名義人とする当該選挙区内にある者に対する寄附」も同条2項で禁止されているが、検察の起訴事実は、「資金管理団体が堀井学を名義人として寄附をした」というのではない。

政治団体「ともに歩き学ぶ会」ではなく、堀井氏自身が、堀井氏個人の資金による供与だったとすると、裏金は政治家個人に帰属し、それを原資に香典等が贈与されたということになるのではないか。

裏金は政治団体に帰属するのか政治家個人に帰属するのか

一般的に、「裏金」というのは、その議員に関係する政治団体・政党支部のどこの収支報告書にも記載しない、という前提で領収書もやり取りせずに供与するものだ。