もしも5万人のうちの1万人が“パスワードを忘れてしまった”とか“入力するのが面倒”という理由で離脱してしまったら、それはA銀行にとっては大きな損失なのです」
ワ方式の「大規模障害」の可能性は?
「実は、今現在最も普及しているホ方式の廃止計画は、すでに国が立てています。現状は移行期間を設けた上で、2026年度いっぱいでのホ方式廃止が想定されています」
言い換えれば、再来年までを目途にある程度の強制力をもってホ方式が切り捨てられる可能性があるということ。しかし、そうは言っても新方式であるワ方式にはさまざまな不安があるのも事実です。
考えられるのは、システムの大規模障害。何らかの理由でサーバーに不具合が発生し、マイナンバーカードの利用そのものが停止してしまうという事態です。
「今までを振り返ってみても、そのような大規模障害が発生したことはありません。ただ、それはまだマイナンバーカードの利用件数が少ないからという事情もあります」
その上で日下氏は、マイナンバーカードのeKYCの仕組みに関わるチャネルが複数に分散されている事実を挙げます。
「ワ方式の仕組み自体、たった1社ではなくいくつもの企業が関わり、分散管理されています。そうしたこともあり、今のところはシステム全体を揺るがすような障害は発生していません」
照会・審査の迅速化に直結
では、そんなワ方式がeKYCの主流になった場合、我々のライフスタイルにどのような変化が訪れるのでしょうか?
「私個人がよく考えていることは、“どこでも気軽に本人確認ができる”という点です。電車内とかでそれを済ませる場合、ホ方式だとその場でセルフィーを撮影しなければなりません。撮影だけではなく、カメラに向かってウインクを要求されることもあります(笑)。ワ方式なら、電車の隅でこっそりカードのICチップ認証を済ませられますから」
また、ワ方式の浸透により「金融サービスの迅速化」も見込めるとのこと。