つまり、外見をどんなに精巧にコピーしたとしても、中身までは再現することはできないそうです。そのため、ICチップ認証を行えば、すぐにカードの真贋が発覚してしまうとのこと。
ワ方式がなかなか導入されないワケ
ただ、現実問題としてワ方式、すなわちマイナンバーカードのICチップを読み取る方式の本人確認を採用している金融機関は決して多くありません。券面の画像だけを確認するホ方式にとどまっているのが現状です。
「現状、地銀でもワ方式を採用しているところは増えてはきていますが、まだまだ多くありません。その理由は、去年までマイナンバーカードの普及率が運転免許証を下回っていた背景が挙げられます。ただ、今では普及率においてマイナンバーカードが運転免許証を上回りました」
しかし、だからといってすぐにワ方式を実装するわけではないと日下氏は話します。
「通常、金融機関は計画立案から実行まで1年か2年を要します。つまり今は、実装期間の只中なのです。金融機関がワ方式の導入を怠っているというわけではなく、我々がこうして取材をしている間もワ方式導入に向けて計画が進められています」
以上のペースを鑑みると、来年頃からワ方式導入を公表する金融機関が現れ始めるとのこと。
また、マイナンバーカードの急速普及がワ方式のスムーズな導入を阻んでいるという側面もあるそうです。
「金融機関の中には、今年ようやくホ方式を導入したというところもあります。それが軌道に乗る前にワ方式へ、ということはやはり難しいのが現状です。
金融機関からすれば、すでに他のものを買ってしまった状態でまた新たに追加投資をしなければならないのか、ということですから」
同時に、金融機関にとってはワ方式の「離脱率」を考慮しなければならないという事情も。
「たとえば、5万人のお客様がA銀行に口座を作ろうと考え、サイトを開きます。その際のeKYCがワ方式だった場合、マイナンバーカードの他にもそれを利用するためのパスワードが必要です。