扁桃体の情動反応が見られないということはつまり、犯罪/スリラー映画を観る上で「犯人のサイコパス的な行動に怖さを感じる」とか「不条理な罠にはめられた主人公を不憫に思う」とか、そうした感情体験に楽しみを抱くことが主軸ではないのかもしれません。
それよりもむしろ、犯罪/スリラーを好む人は「犯人はどうやって完全犯罪を成し遂げたのか」とか「序盤から散りばめられた謎の伏線はどうやって回収されるのか」といった知的な謎解きに重きを置いていると見られるのです。
他方のドキュメンタリー好きに関してはもっとわかりやすいです。
彼らはフィクションに基づく感情の起伏を楽しむよりも、ノンフィクションで語られる現実の社会問題や事実を知ることにこそ、映画を観る楽しみを抱いているのでしょう。
扁桃体の活動が低かったのはこれが要因だと思われます。
以上の結果から研究者らは、アクションとコメディー好きは「感情体験」に、犯罪/スリラーとドキュメンタリー好きは「知的体験」にこそ映画の楽しみを抱いている可能性が高いと結論づけました。
その一方で、今回の研究はネガティブ感情への反応にのみ焦点を当てている点で限界があるといいます。
おそらく、ドラマやロマンス、SF/ファンタジー好きに脳活動の有意差が出なかったのも、これが一因として関わっていると見られます。
この研究はまだ、好きな映画ジャンルと脳活動の関連性の一面を解き明かしたのに過ぎません。
「アクションとドキュメンタリー、どちらも好きな俺はどうなんだ?」という意見もありますでしょうし、「オールジャンルを均等に好んで観ている」という方も少なくないでしょう。
こうした疑問に答えるには、引き続きの調査が必要なようです。
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参考文献
Brain research: Study shows what your favourite film genres reveal about your brain
https://pressemitteilungen.pr.uni-halle.de/index.php?modus=pmanzeige&pm_id=5788