対照的に、犯罪/スリラーとドキュメンタリーを好む人々では扁桃体の活動が著しく低下しており、ネガティブ感情をほとんど感じ取っていないことが示唆されたのです。
これらの結果は一体どのように解釈されるのでしょうか?
映画の楽しみが「感情体験」か「知的体験」かの違い
まずもって、コメディ好きな人たちがネガティブ感情に敏感であることは腑に落ちます。
恐怖や不安といった負の感情を敏感に感じ取ってしまうがゆえにホラーやスリラーが苦手になり、その真逆の笑いや喜びといったポジティブ感情を与えてくれるコメディ映画が好きになるのでしょう。
その一方で研究者らは、アクション好きがネガティブ感情に敏感であることは意外だったと話します。
アクション映画は、怒りや悲しみといった負の側面も含めた刺激的な感情を積極的に提供するジャンルだからです。
しかしこの点について研究者は「アクション好きは感情的な刺激の影響を受けやすいことで、逆に映画を楽しめるようになっているのかもしれない」と推測します。
例えば、アクション映画の多くは序盤に、敵に仲間を殺されたり、家族や恋人が誘拐されたり、極悪非道なラスボスの罠にかかったりと、ネガティブな出来事が必ず起こります。
このときに一度、怒りや恐怖を感じたり、憎悪や悔しい感情を強く抱いてドン底に落ちることで、クライマックスの展開にスカッとしたカタルシスが得られるのでしょう。
つまり、アクション好きはポジティブもネガティブも含めた「感情体験」にこそ、映画を観る楽しみを感じていると考えられるのです。
反対に、犯罪/スリラー好きには扁桃体の活発な活動が見られませんでした。
これについて研究者は「犯罪/スリラーのジャンルが好きな人たちは感情体験ではなく、知的体験に楽しみを見出している可能性が高い」と指摘します。