取材の際、オフィスで顔を合わせた人たちは、皆丁寧に挨拶をしてくれた。Ainali氏の言うとおり、生き生きと仕事をしている様子がうかがえた。オフィス全体は明るい内装で、共有スペースがいくつもある。共有スペースにはキッチンやソファ、暖炉まであり、“会議室”よりはるかに居心地がいい。筆者のまわりでもハイブリッド勤務を続けている人がまだまだ大勢いるが、iLOQのように多くの新技術を生み出していくには、エンジニア同士が顔を突き合わせ、とことん意見を言い合える環境が必要なのかもしれない。

共同スペースにある暖炉。ここでエンジニアたちがブレインストーミングするという(筆者提供)

現時点では日本未上陸のiLOQ、今後の展望は

――現時点(2024年8月)で日本市場では販売されていないようですが、今後の予定を教えてください。

Ainali:ロックシステムには地理的な規格があり、同じヨーロッパでも北欧と中欧では規格が違います。弊社のような小さな会社は、技術者と相談しながら市場を開拓していかなければなりません。

現在、子会社とともに16か国で事業を展開していますが、新しい地域に進出するためには設計の変更とそれに対応するリソースが必要です。ビジネスチャンスを探ってはいますが、今のところ日本は未上陸です。

電池いらずでメンテナンスも不要、さらにアクセス制限をリモートで管理できるなど、高い利便性を誇る同製品には、多様な業界の企業・組織のロック事情を革新できる可能性がみてとれる。いつか日本でもiLOQが導入されることを期待したい。

iLOQ Oy について
ロックシステムに配線や電池を不要とする技術と複数のアクセス管理ができるクラウドベースのプラットフォームを導入し、入退室管理業界に革命を起こす。iLOQは1,800社以上の提携パートナーを通じ、世界55か国以上でデジタルロックシステムを販売。2023年の売上高は1億4,130万ユーロ、従業員数は320名以上。昨年秋には創立20周年を祝うイベントが開催された。詳しくは、www.iLOQ.com。