文明人としての人間が犯してはならない3大タブーとは、殺人、近親相姦、そして食人だ――。しかし人肉食については歴史を通じて考えられているよりも多くの文化が実際に行っていたのである。古来より人肉食を実践してきた古代文化をフィーチャーする今回の記事では、死者の脳を食べる風習から医療目的の“医療共食い”まで4つのカニバリズム文化を紹介したい。
【こちらの記事も人気です】
■フォレ族:パプアニューギニア
パプアニューギニアの東部高地に生息するフォレ族は、かつて何世代にもわたってきわめて不穏で珍しい形態の人肉食行為を行っていた。「同族共食い(endocannibalism)」と呼ばれるこの恐ろしい伝統は、愛する故人の霊魂があの世へ旅立つのを促進する方法として行われてきたが、その一方でクールー病(Kuru)として知らる神経の変性をもたらす治療不可能な風土病の蔓延を招いた。
クールー病はヒトの脳に多く含まれるプリオンの摂取が原因で、罹患するとさまざまな神経症状を引き起こし、震え、運動制御の喪失、そして最終的に死に至るものであった。潜伏期間は5年から20年で、発症後に最終の第3ステージに達すると3カ月から2年で死亡するといわれている。
フォレ族は長い間、彼らの人食い習慣とクールー病との関係に気付かなかったが、20世紀半ばになってから西洋の研究者がクールー病と人肉食との関連性を突き止め、フォレ族は徐々にその風習を放棄していった。現在、彼らはより現代的で危険性の低い埋葬儀式に移行しており、古代の伝統を尊重しながらもクールー病の脅威を取り除いている。