ほとんどすべてのクラゲは寿命を終えると、体が徐々に分解されていき、海の中へと溶けていきます。
ところがベニクラゲは違います。
彼らはメデューサの段階で飢餓状態に陥ったり、体を損傷したりすると、ポリプの状態に戻り、何度も生をリスタートできるのです(上図の青色ルート)。
しかも、この若返りの秘術はたった1回だけ許された能力ではなく、何度も発動することができます。
つまりベニクラゲは理論上、「不老不死を手に入れた存在」と言えるのです。
一方通行の老化が運命づけられている生物において、ベニクラゲの能力は異例中の異例であり、特異な存在といえます。
ところがベルゲン大学の研究チームは、ベニクラゲと同じ能力を持った新たな生物を見つけたというのです。
それが「ムネミオプシス・レイディ」でした。
不老不死の能力を持つ新生物「ムネミオプシス・レイディ」
「ムネミオプシス・レイディ(学名:Mnemiopsis leidyi)」は、クラゲに似た見た目をしていますが、クラゲの仲間ではありません。
彼らが属するのは有櫛動物(ゆうしつどうぶつ、クシクラゲ類とも)というグループです。
クラゲ類(刺胞動物)が漂泳性と付着性の2つの生活環を持つのに対し、クシクラゲ類(有櫛動物)の生活環はすべて漂泳性のみになります。
なので、彼らがクラゲのポリプのように海底に固着することはありません。
ムネミオプシス・レイディの生活環
ムネミオプシス・レイディは最初、ベニクラゲと同じように、両親の交配による受精卵から生をスタートさせます。
産卵から大体24時間かけて発生し、ふ化した自由遊泳性の幼生が「シディッピド(cydippid)」です。
シディッピドの最大の特徴は獲物を捕らえる2本の長い触手であり、これは成体には存在しません。
その後、触手が退化して体が大きく成長すると「ローベイト(lobate)」と呼ばれる成体に達します。