ウクライナは、民主党ハリス候補に有利になるように、アメリカの大統領選挙の投票日まで華やかな軍事的成果を見せたい。これに対して、ロシアは当然それを潰したい。そのため11月のアメリカの大統領選挙よりも前に、確実に効果を投票日に及ぼすことができる10月までには、ウクライナ軍のクルスク攻勢を駆逐したい、と思うだろう。

よりロシア側の視点に即して見てみたときの10月の大きな政治日程は、10月22~24日にロシアのカザンで開催予定のBRICS首脳会議であろう。プーチン大統領が、BRICS首脳会議開催前に、クルスク戦線のめどをつけておきたい、と願うのは、自然である。

10月のBRICS会議は、今後の国際情勢を分析するうえで、非常に重要な意味を持つものとなる。ロシアで開催される、今年になって正式加入した5カ国を含めた拡大BRICSの首脳会議として初めての開催になる、40カ国以上とも言われるBRICS加入申請中の諸国の取り扱いが注目される、といった事情もある。

だが本丸中の本丸の課題は、BRICS共通決済体制の導入などを通じた、国際的なドル決済体制への挑戦を、軌道に乗せられるかどうかである。中東の四つの主要国を同時にBRICSに加入させた決定も、原油取引におけるドルの覇権的地位に挑戦したい意図をBRICS諸国が持っているからだ。昨年からのガザ危機は、イランの存在感を高め、サウジアラビア、UAE、エジプトが、イスラエルから離れてアメリカに不信感を持つ土壌を作り出した。政治的機運は高まっている。

2022年にロシアがウクライナに全面侵攻をした際、アメリカを中心とする欧米諸国は、空前の規模の経済制裁でロシア経済を痛めつけることによって、プーチン大統領の野心を挫く、と力説していた。これが大言壮語でしかなかったことが今日では自明になっており、欧米諸国は物価高に苦しみながら終わりのないウクライナ向け武器支援への対応を要請され、多数の諸国で右派勢力が台頭する混乱に苛まれている。