その結果、気温、湿度、気圧、降雨量の変化は、膝、股関節、腰の痛みを強めることはなく、関節痛が新たに生じることとも関連がないと分かりました。
つまり今回の研究の結果は、「寒さや雨などの天候の変化が関節痛を悪化させる」説を否定するものとなりました。
ただし、非常に低い温度(10℃未満)条件での過去の研究はほとんど無かったため、今回の研究では、極端な天候の変化がどのような影響をもたらすのか分かっていません。
また症例に例外もありました。
痛風だけは天候の変化と関連性が確認できており、暖かく乾燥している時に痛みのリスクが高まりました。
これは痛風の痛みが一般的な関節痛とは異なったメカニズムで生じているからだと考えられます。
暖かくて乾燥した気候では、脱水症状が増加し、結果として尿酸の血中濃度が上昇。尿酸の結晶が関節に付着しやすくなるのでしょう。
しかし疑問が残ります。
それは、なぜ多くの人が「雨の日に関節が痛む」と訴えるのか? という点です。
なぜ人々は関節痛の悪化を天気のせいにするのか
フェレイラ氏らは、人々が関節痛の悪化を天候の影響だと考える理由について、次のように説明しています。
「天候は、他の要因や行動に影響を与え、それが患者の痛みの認識や管理にも影響を及ぼします」
例えば、冬だけは運動習慣が変わって、ジムで運動するよりも、ソファーで過ごす時間が増えるかもしれません。
長時間座っていると腰痛を悪化させるため、これが原因で「冬は痛みが増す」と感じる可能性があります。
さらに、寒すぎたり暑すぎたりすると、睡眠の習慣が変化したり、眠りが浅くなったりするものです。
寝不足は腰痛や膝痛の引き金になることがあるため、これが直接的な原因かもしれません。
寒さや雨などが直接的に関節痛を生じさせるのではなく、寒さや雨の影響で私たちの行動が変化するため、それが関節痛を生じさせている可能性があるというわけです。