このことから研究者たちは、ホオジロザメたちは物理的に3つの海域に閉じ込められ、この状態が十数万年も続いたことで遺伝的に3つのグループに変化したのだろうと指摘しました。
しかも今日ではそうした物理的障壁はないにも関わらず、3つの派閥はお互いに交流を絶ったままになっているのです。
まるで”見えない壁”にでも仕切られているように見えます。
それぞれの派閥に属するサメたちはもはや、それぞれの海域の環境に個別に適応してしまって、他の組と交わることが難しくなっているのでしょう。
保護の面で問題もあるが「希望」もある!
以上の結果を受けて、チームは「ホオジロザメの保護が予想以上の困難に直面している」と指摘します。
というのもホオジロザメが遺伝的に単一の種であるならば、どこかの海域の個体群が減っても、別の場所から導入したサメと交配させて繁殖できると考えられていたからです。
ところがホオジロザメが3つの派閥に分かれていて、それぞれのグループ同士は互いに交わらないとなると、この繁殖方法は通用しない可能性があります。
アバディーン大学の生物学者で研究主任のキャサリン・ジョーンズ(Catherine Jones)氏も「長年の間、ある地域から失われたサメは他の地域からの移動と交尾によって埋め合わせられると考えられてきましたが、私たちの研究はそれが現実的でないことを示唆している」と述べています。
その一方で、今回の研究は数少ない「希望」も提示してくれました。