大変に興味深いのは、この時点で(すでにロシアと対立していた)EUは「ロシアの犯行」とは名指ししていなかった。しかし日本人の専門家は、そうしたEUの内心(?)を忖度して「ロシアがやった」と公共の電波で明言したことだ。その忠誠ぶりは、もはや部下のようである。
もっとも「優秀な部下」であったかというと、それはまた別だ。一般論として、Aがやったと匂わせつつも、あえて「A」の名を出さない場合には、以下のいずれかの理由がある。
① Aがやったと示す物証があるが、Aとの取引の余地を残すために、戦略上、名前は出さない。 ② Aがやったとは、確信できる段階にまだない。 ③ 本心では、Aがやったのではないことを知っている。
EUがロシアと明言しない理由は「①~③のどれだろうか?」を検証し自説を述べるのが、本来の意味での専門家の仕事でありインテリジェンスだが、横からしゃしゃり出て「Aです!」と断言されては、EUの深謀遠慮も台無しだ。控えめに言って、無能な部下である。
ここで気がつくべきは、こうした「欧米への過剰忖度」という専門家の病は、ウクライナ以前からコロナでも共通だったことだ。感染者を文字どおり「ゼロにすること」を目指して対策を採った先進国は、ニュージーランドなどの例外に留まったが、多くの人が「きっと欧米ではゼロが目標のはずだ」と誤認して、日本での対策を暴走させた。
まだ裏が取れていないので、あくまでも「耳にした情報」の報告に留めておくが、後に言動の誤りが発覚して窮地に立つ専門家を顧客とするビジネスも、いま法曹の一部にはあると聞く。
毎日メディアに出て、自分の意見以外は「あってはいけない」かのように振る舞い、SNSでも他人を攻撃する能力を発揮していれば、まちがいがわかった際に叩かれるのは当然だ。しかしそこで「言葉が過ぎた」発言者を見つけて司法に訴え、損害賠償をとれば「まっとうな批判」も委縮させられる。