お父さん・お母さんの育児の負担を下げるため開発された可動式の完全個室ベビーケアルーム「mamaro」。横浜で起業し、現在、横浜スタジアム、東京ドームやららぽーとなど全国で700台導入されるまで広がり(2024年7月時点)、営業利益は2023年で1.2億円ほどになっているといいます。

その「mamaro」を開発し、子育て世帯向けの製品やサービスを提供するスタートアップ企業Trim株式会社の代表・長谷川裕介さんは、もともと広告代理店でコピーライターをしていました。

順風満帆に見える職業から、なぜ長谷川さんは少子高齢化が進む日本で子育て世代向けのビジネスを展開するに至ったのでしょうか。これまでの経緯や思いについてお聞きしました。

mamaroについて解説した記事はこちら

「育児の難しさ・つらさを軽減へ! 外出先で使えるベビーケアルーム「mamaro」とは」

貯金のほとんどを使って起業へ

ーーー長谷川さん自身は大学卒業後、広告代理店に10年間いらっしゃって、その後医療系のベンチャーに行かれたそうですが、理由はどういったところにあるのでしょうか?

28歳のときに僕の母が癌(がん)で他界したんですけど、ろくでもない息子だったので本当に親孝行の1つもせず母に逝かれてしまって。

葬儀のときに姉と父が「どこどこに連れていってあげた」という話をしているのを聞いて、「俺もう親孝行できないじゃん」と気づいて申し訳ないなと思っていたんです。実は、その時ちょうど(仕事で)担当していた商品にネット上で発がん物質があるとかないとか叩かれた時期でした。

おそらく(発がん物質は)ないんですけど、親が癌で亡くなったのに、そんなものを売る行為に携わっていていいんだっけと疑問に思って。

よりダイレクトに人の役に立つ仕事がしたいなと漠然と思っていたときに、たまたま医療系ベンチャーの社長と知り合いました。