ーーー僕は『あしたのジョー』という作品がとても好きで。(ヒロインの)白木葉子さんの反対を押し切って戦うジョーがかっこいいなと思っていたんですけど、今後は通用しない……?

いや、通用しないというか、あれが日本的な働き方の根幹だと思うんですよ。やっぱりかっこいいじゃないですか。

なので、(インタビュー前に話していた)新選組もそうだと思うんですけど、あれをかっこいいと思っていると、絶対どっかでバーンアウトすると思いませんか?

ーーーうん……(笑)。

すいません、何をこう説得してるんだって話になりますけど(笑)。

―――いえいえ。“灰になる”ということですよね(笑)。

そうなんですよ! 灰になったら家族とか子どもとかどうするんだみたいな(笑)。

子どもがいなくても、灰になるまで戦うとか、負けたら切腹という文化って、私から見ると「それがメジャーなのって、一体……?」という気持ちになっちゃうんですよ。

全身から半身へ

ーーー書籍のなかでは、全身ではなく、半身で働くのが良いという話がされています。ただ、この競争社会では難しいのではないでしょうか?

私は、“思想”がとても大事なもので、「競争に勝てるのって表現なんじゃないか」と最近では思っています。表現って、“何がイケてるか”という話なんじゃないかなと。

競争は、勝つか負けるかという世界だと思うんですけど、表現だと、かっこいいかダサいか、とか、キレイかキレイじゃないかという話じゃないですか。

サラリーマンのなかで何がイケてるかイケてないかって時代によって変化していて、高度経済成長期(1955年~1973年ごろ)以降は『あしたのジョー』の考え方がイケてる世界観だったと思います。

ですが、(いまの)若い世代を見ていると、競争がなくてもイケてる社会は、そんなに無理なことではないと思わなくもないですね。

もちろん競争をゼロにするのは無理だと思うし、それが現実的だとも思っていないんですけど、そういう価値感もあるよって言っていくことも大事かなと。