ハシナ前首相と、ユヌス氏が長年にわたる確執を持っており、その背景にハシナ氏側にインド、ユヌス氏側にアメリカが存在していることは広く知られる。
事実の問題として、アメリカが、ベンガル湾をにらむセント・マーチン島に強い関心を持ち、自国の海軍基地の建設をハシナ政権に打診して、断られたことは、事実である。もしアメリカが海軍基地を建設したら、ベンガル湾に浮かぶ美しい観光地で知られるセント・マーチン島は、その意味を一変させるだろう。
アメリカのインド洋における重要拠点がバングラデシュ領に建設されたら、地域情勢に与える影響も甚大だ。中国を大きく刺激するだけではない。海軍力においてこの地域で大きな存在感を持つインドとバングラデシュとの関係を著しく複雑化させる。
さらにミャンマー国軍及びその他の勢力も過敏な反応をしてくるだろうことは必至である。正直、アメリカはそこまでバングラデシュと親密だったか?という疑問符の付く印象しか残らないアメリカの態度であった。
だがアメリカがかなり本気だった、という可能性がないわけではない。われわれ日本人は、「インド太平洋」「クアッド」を、アメリカとその伝統的な同盟諸国を、インドと結びつけた、というふうに考えがちである。ただ、もっと覇権主義的に「インド太平洋」を理解し、インドを気遣うのではなく、より直接的にアメリカの影響力をインド洋に展開させたい、という野心を持つ傾向が、われわれ以上にアメリカ人の心の中にあることは、確かだろう。