そこで今回シカゴ大学の研究者たちは、量子もつれを使用して、光速の壁に縛られない超光速情報通信を使用する方法を考案しました。
先に述べたように情報伝達プロセス全体では光速を超えることはできません。
しかし「量子もつれ状態にある粒子を事前に分け合う」ことができれば、その後で疑似的な超光速通信が可能になります。
今回の研究でもこの「事前に分け合う」という概念を基本にしており、まず上の図のように、量子もつれ状態にある粒子のペアをニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)にいるシステムに分配します。
こうすることでニューヨーク証券取引所(NYSE)の値動きを超光速でナスダック(NASDAQ)に送ることが可能になります。
たとえばある粒子の状態Aを買い、別の状態Bを売りと事前に取り決めておけば、ハートマークよりも迅速に情報を送れるでしょう。
ただ今回の研究や論文著者が特許を取得した方法では、恣意的な弱い観測以外の方法が提案されています。
恣意的な弱い観測を行うにはわざわざ特定の観測結果しか出ないように細工する手間がかかる上に、弱い観測という性質上、確実性もあまり高くなく、巨額の売り買い情報を託すにはリスクがあります。
そこで今回の研究では、もつれ状態にある粒子に対する「観測方法の種類そのもの」を変えるというアプローチが提案されています。
たとえばある粒子ペアに対しては手法A(たとえば磁気を使った観測)を行い、また別の粒子ペアに対しては手法B(エネルギーを用いた観測)を行うというものです。
すると、それぞれの観測結果は当然ながらランダムなものになります。