過去の金星では地球と同じように多くの水を含む大気が存在しました。

金星は地球より太陽に近いため、太陽から受け取るエネルギーの量が多く、そのため地表の温度は地球より高くなります。実際、金星が受け取る太陽光は地球の約2倍です。

金星の大気には二酸化炭素とともに水蒸気が含まれていたため、その温室効果によって大気の温度が上昇しました。温度が上がるとさらに水が蒸発し温暖化がますます加速されます。

地球の場合、上空で冷やされた水蒸気は雲となり雨となって地表にもどります。

一方、金星の場合は太陽に近く大気の温度が高いため、雲(水蒸気)は液体の雨となって地上に戻らず、上層まで運ばれるのです。すると、水は太陽からの紫外線によって水素と酸素に分解されます。水素は軽いので、熱運動によって金星の重力を逃れ、宇宙空間へと飛び出していってしまいます。

残された酸素と二酸化炭素のうち、酸素は地表の岩石を酸化するのに使用され、大気中には大量の二酸化炭素だけが残りました。

このように、金星では水蒸気による温室効果が暴走し、地表の水がすべて蒸発することになったのです。そして、金星は水の雲ではなく、硫酸の雲に覆われる惑星になってしまったのです。

この硫酸の雲や雨はどのようにできたのでしょうか?これも、かつて金星に水があったとすると次のようなメカニズムが考えられます。

金星の地表は460℃という高温のため、黄鉄鉱などの硫黄を含む鉱物が二酸化炭素や水と反応して二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を大気中に放出しました。

二酸化硫黄は硫黄を燃やしたときにできる気体です。その後、上空50km~70kmまで上昇した二酸化硫黄が酸素や水と反応して硫酸の雲になったと推測されます。

秒速100mの風

金星の大気の動きも謎に満ちています。金星の大気の最大の謎は、上空に秒速100mを超える強風が吹いていることです。この風速は地表に接している大気の風速ではありません。高度45~70kmにある雲の層の風速です。